データストーリーテリングとは

データストーリーテリングとは何か?

データストーリーテリングは、集めたデータを視覚化することでブランドの物語を伝える技術です。ブランドにって強力なコミュニケーションツールの1つになります。

ここ十数年でBI(ビジネスインテリジェンス)ツール、ダッシュボード、スプレッドシートなどのソリューションが増加しているにも関わらず、企業のマーケティング担当者は依然としてデータに隠されている機会を十分に活用することができていません。

データストーリーテリングは、データビジュアライゼーションとも言われたりします。しかし単純なデータの視覚化や分析レポートではありません。

データは何が起こってるかは教えてくれるけど、なぜ起こっているかは教えてくれない

BIツールやダッシュボード、スプレッドシートにはいくつかの制限があります。

  • データラングリング(データを飼いならすこと)と手動レポートがいまだに一般的です。人手が必要になると、データ分析やコミュニケーションが遅くなります。
  • これらのツールはデータを数値とチャートとしてのみ表示します。これらは情報や洞察を効果的に伝達するための「語り」という重要な要素が欠けています。
  • 現在のツールでは情報の要求を拡大することができません。ほとんどのマーケティングやセールス、オペレーションおよび分析チームはお客さんや社内外の関係者などからの報告要求の全てにに答えるだけのリソースと時間が足りません。

ではどうやって、企業はデータ中心から利益中心に変えることができるでしょう。

答えは簡単です。あなたの会社にデータストーリーテリング文化を取り入れましょう。

”今後数十年の間に非常に重要なスキルになる”

2009年のインタビューで、GoogleのチーフエコノミストDr. Hal R.Varianは次のように述べています。

「データを取得する – 理解する、処理する、価値を抽出する、視覚化する、伝達する – これは、今後数十年の間に非常に重要なスキルになるでしょう。」

データストーリーテリングが未来を語る理由

データストーリーテリングは、説得力のある語りを使って、特定の視聴者に合わせて情報を伝達するための方法論です。進化論的に、人間として、私たちは情報を共有する手段としてストーリーを共有することは当然のことです。

理論家たちは、ストーリーテリングが、今日知られているように文化を形成し、世代を超えた進化的な成功を可能にした、大勢の人々の間での知識の伝達のための主要な出発点であるとさえ示唆しています。

現在、私たちに利用可能な大量のデータを使用して、データストーリーテリングのみが、ますます複雑化し、急速に変化するデジタル時代の世界に人間の視点を置くことができます。

(図)

データストーリーテリングの3つの構成要素

データストーリーテリングは、主に3つの専門分野で構成されます。

データサイエンス

この専門分野は、学際的な科学分野であり、データから知識と洞察を引き出し、すぐに利用できるようにします。 この刺激的な分野は、過去数十年の間に私たちの日常生活に大きな変化をもたらしました。 当然のことと思われるテクノロジーはすべてこの分野の専門知識によって推進されていますが、データサイエンティストが本来熟練していないことが1つあります。

それが、ストーリーテリングです。

データサイエンティストは、データの収集と配信に熟練していることが多くありますが、配信されるデータに隠されている機会についての真の理解を伝えるためのスキルを欠いています。

ビジュアライゼーション(視覚化)

ダッシュボードなどのテクノロジソリューションの出現は、収集された膨大な量のデータを理解するのに役立つ、自然な解決策となりました。

データをグラフ、円グラフ、折れ線グラフに変換すると、これまでにないほどデータをわかりやすく見ることができますが、データの視覚化だけでは限界があります。

それらは一目でわかるデータのスナップショットを提供しましたが、なぜ何かが起こったのかを説明するのに必要なコンテキストを欠いていました。

ナラティブ(語り)

データストーリーの3番目の、そして最も重要な部分は物語です。 物語は私達の特定の必要性に適するフォーマットで言語を使用して、新しい情報への完全な理解を増強します。

物語は洞察を伝える重要な手段であり、視覚化とデータが重要な証明ポイントです。

 

優れたデータストーリーは、データ、ナラティブ、ビジュアルという3つの主要な要素を活用します。

データの構成要素は単純です。

まず、正しい洞察を得るには、正確なデータが必要です。

ビジュアル要素を使うと、スプレッドシートの行と列には表れにくいデータセット内の傾向とパターンを発見することができます。

ナラティブ要素は、データに声を与えます。各データポイントは、ストーリー内のキャラクター(主人公)であり、独自のストーリーを持っています。

ナラティブ、データ、ビジュアルを組み合わせることで、ビジネスの変化を促進するデータストーリーを作成することができます。

データストーリーテリングは新しい概念ではありません。企業はこれを長年にわたって試みてきており、成功を収めています。

企業が、データストーリーテリングの力を利用して顧客とコミュニケーションを取った方法の例をいくつか示します。

(事例)

データストーリーテリングの歴史

歴史を振り返ると文化や社会は、洞窟の壁画から小説や映画に到るまで物語を語り続けてきました。物語は、意味ある情報を伝達するための基本的な形式になります。

ストーリーテリングの最古の例は、洞窟壁画です。

最も古いものは1940年に発見されたラスコー洞窟の壁画です。20,000年前の後期旧石器時代のクロマニョン人によって描かれたといわれています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%BC%E6%B4%9E%E7%AA%9F

口頭による物語行為は言語の進化からの直接の副産物だと思われますが、「執筆」は紀元前3,400年頃の古代メソポタミアで始まったようです。シュメール文明は粘土板に印を付けました。それは経済の維持と行政の記録に使われました。文明が発展するにつれて、シュメール人の筆記者たちもそれらの教えの多くを書き記していました。

2つのシュメール語の文章「Kesh Temple Hymn」と「Instructions of Shuruppak」は、世界で最も古い文学であると考えられています。シュメール人によって書かれた最も古い文学作品は、紀元前2000年頃に書かれた「ギルガメッシュの叙事詩」であると信じられており、古代メソポタミアの伝説的な王ギルガメシュの物語を描いています。

印刷、ラジオ、テレビの登場

テクノロジーが急速に発展した19世紀および20世紀では、 私たちが話をしたり物語を共有したりするチャネルも進化しました。

印刷、ラジオ、テレビなどの発明です。これらは人々の生活と物語行為に劇的な影響を与えました。 私たちは、人々が物語を語り、他の人々に影響を与えるためのより多くのチャネルを生み出し続けています。

ラジオドラマ「宇宙戦争」事件

イギリスの作家H・G・ウェルズが1898年に発表したSF小説「宇宙戦争」のラジオドラマが1938年に放送され、全米で聴衆にパニックを引き起こしたと言われるています。宇宙人が地球(アメリカ)に攻めてきたという内容ですが、現場からの報告など実際のニュース放送のような形で放送されたため、多くの市民が現実に起きている出来事と勘違いし、パニックを引き起こしたとされています。

これは、新しい技術を活用したストーリーテリングの強力な例です。 

現代のストーリーテリングは、映画館、テレビ、新聞、インターネットで見つけることができます。私たちが消費するどんな媒体でも物語を語る可能性があります。

教育の分野でさえ、この分野のリーダーは物語の力を利用しています。 たとえば、人気のある教育的で有益なビデオシリーズ、TED Talksの分析では、ストーリーがコンテンツの少なくとも65%を占めていることがわかりました。  なぜなら、ストーリーは常に意味のある情報を伝達するためのより簡単な形式だからです。

データという事実に物語という文脈を与えた

人間として、私たちは本質的に、社会的な生き物であり、そして私たちはますます社会的世界の機能として他の種と比較して独特に進化しました。 ストーリーは、私たちが有意義な情報を理解するのを助ける力を持ち、その結果、私たちの価値を形作り、私たちの偏見を決定し、そして私たちの夢に影響を与えることができます。 聖書などはこれの典型で、今日でも現代世界に影響を与えています。

物語の心理学、特に記憶補助は、情報過多な時代において極めて重要なトピックです。 定義上は、事実は単にデータを示すだけです。 一方で、物語の語りは文脈を提供し、それが私たちの理解を高め、価値ある気づきをもたらします。

記憶するために物語を使用するストーリーメソッドとして知られているテクニックも使われています。 このメソッドの有効性は、脳のより多くの部分に関わることができる物語の感情的側面を介した、記憶プロセスを支援するナラティブ能力の使用に根ざしており、物語とその要素を思い出しやすくします。

 

まとめ

データ、ビジュアル、ナラティブの組み合わせ(データストーリーテリング)により、企業はこれまで以上に貴重な洞察を発見することができます。 あまりにも長い間、主な洞察の発見に焦点が当てられてきましたが、それらを伝達することも同様に重要です。

データストーリーテリングだけが、ますます複雑化し急速に変化するデジタル時代の世界に、人間の視点を置くことができます。